債務整理のここだけの話
どうせ、凄腕ホストが話術でごまかすことが前提ですから、デタラメな商品ほどかえって使いやすかったりするようです。
あるいは、資産のかなりの部分を失って資産運用が怖くなり、取引を打ち切る客がいたとしても、銀行側からすれば、その客の懐具合に応じて十分に巻き上げたということになります。
遊びすぎてカネが払えなくなった客は、高級ホストクラブにとって、もはや客でないのと同じことです。
どちらにしても、プライベートバンカーが客に対して、一発で大損する危険性がある商品を売りつけることには、合理的な理由があるのです。
上の広告は架空のものであり、登場する企業や金融商品などは、現実の企業や金融商品などとは一切関係ありません。
万円単位で申し込みできる、一般的な金融商品です。
この商品は、通貨のオプション取引と債券をセットにしたものですが、ふつうのオプション取引ではなく経路依存型オプション取引″と呼ばれる特殊な取引を使っています。
もっとも、かなり昔からあるタイプの商品で、この商品で使われているオプション取引も、この商品そのものも、専門家からみれば、かなり簡単な金融取引(金融商品)の部類に入ります。
ただし、商品設計の際の計算では、コンピューターを駆使して膨大な計算をする必要があり、IT(情報技術)の進歩によって実用化された金融商品と言えます。
商品を比べると、まず、外貨預金の代わりに外貨債券が使われていますが、どの商品も満期まで保有することが前提で、中途解約や中途売却はできないか、できても非常に不利な条件になるでしょうから、預金と債券のちがいにさほど意味はありません。
なお、この債券の発行者の「凹凸共和国産業金融公社」は、もちろん架空の団体ですが、先進国の公的金融機関であり、信用リスクはないものと仮定しましょう。
ただし、外貨預金は好きなタイミングで運用が始められるのに対し、外貨債券は決められた運用期間で運用するしかありませんから、自由度はやや劣ります。
しかし、コスト面を考えると、こういった債券は証券会社が扱っていますので、銀行が扱う外貨預金と比べると、為替手数料が半分ですむ可能性が高いでしょう。
その一方で、外国債券を購入すると、年間3150円(税込み)程度の口座管理料が徴収されるのが一般的ですが、このタイプの商品では免除されたりするようです。
この債券の運用期間は「1年」で、円ベースで「年3.3%」の金利がもらえます。
また、金利の支払いだけは、必ず円でおこなわれます。
外貨として「カナダドル」が選ばれていて、「カナダドル償還特約付、円/カナダドル債券」となっています。
円とカナダドルのどちらで償還されるかは、広告の下半分に書かれたルールにしたがって決まります。
ここでは、円の債券にカナダドル転換の特約がついているものと考えましょう。
「ノックインレベル」として説明されているのが、カナダドルヘの転換の基準となる為替レートです.当初為替レート(運用開始日の午前11時の為替レート)から8.5円/カナダドルだけ円高に設定された為替レートがノックインレベルになります。
これを基準に、それよりも円高になった場合には、当初為替レートで換算したカナダドルで償還されますから、大きな為替差損を被る危険性があります。
他方、ノックインレベルを超える円高が生じなければ、円で償還されますから、元本に対して3.3%(税引前)の利息がもらえるだけで、為替差損も為替差益もありません。
基準となるノックインレベルが、当初為替レートよりも8.5円/カナダドルも円高に設定されていますが、仮に当初為替レートを85円/カナダドルとすると、ちょうど10%までの円高なら、ノックインレベルを超えないことになります。
10%以上の幅での円高が生じなければ、運用は成功し、客が損をすることはないのです。
このように説明すると、成功する確率の方が失敗する確率よりもかなり高いように思えます。
しかし、広告の説明をよく読むと、カナダドルヘの転換条件は、もう少し複雑です。
債券の運用期間の1年間ずっと、銀行同士での外貨取引で標準的に使われる金融情報端末に表示される円とカナダドルの交換レートを観察し、「観察期間中のいずれかの時点で円/カナダドルレートがノックインレベルを下回るか等しくなった場合」には、カナダドルで償還されてしまいます。
特約つき外貨預金では、満期日の2営業日前の為替レートだけで判断されたのに、こちらは、1年間のどの日に基準の為替レート以上の円高水準になっても、それでカナダドルヘの転換が決まってしまうのです。
先の図岨の商品であれば、満期直前の為替レートだけで判断できますから、いくつかのデータをもちいて簡単な計算をすれば、平均的にどれくらい儲かるか損するか、大まかな評価ができました。
しかし今度の商品は、1年間の為替レートの変動パターンに応じて、千差万別の結果がありえますから、単純には評価できないのです。
だから経路依存型″と呼ばれているわけです。
なお、銀行でも、経路依存型オプション取引を組み合わせたタイプの特約つき外貨預金は、かなり前から販売されています。
EB債が流行した時期には、こういった経路依存型オプション取引を応用したEB債や、もっと複雑なオプション取引を応用したEB債が、新聞広告などで宣伝されていました。
*じつは、EB債も、3ヵ月ごとに期限前償還される条項がついていましたので、経路依存型の性質を少しもっていたと言えます。
シンプルなEB債の広告をみつけるのは、意外にむずかしいのです。
このタイプの商品での損得をきちんと計算しようとすると、高価なソフトウェアが必要になります。
昔は「1億円のソフトが必要」などと言われていましたが、いまは十数万円のソフトでもかなりいい計算結果が得られるようになっています。
とはいえ、個人でそんなソフトを買う人はあまりいないでしょう。
単純な特約つき外貨預金と比べて、商品開発側と客側の情報格差がずっと広がっているのですから、当然のことながら、客が騙される危険性はさらに高くなっていると考えるのが無難でしょう。
ただ保険会社を儲けさせるだけの年金本章では、年金保険の広告をみていくことにします。
2003年から2004年にかけて、公的年金制度の改革が話題になり、国会議員の国民年金未加入問題や、年金運用の失敗や、特定の人たちと一般庶民の年金格差などの問題がどんどん報道されて、将来の年金不安が増幅されました。
また2005年春のペイオフ完全解禁もあり、低金利が続くこともあって、個人で資産運用をして年金を用意するための金融商品、いわゆる個人年金保険(単に個人年金とも呼びます)を契約する人(加入者)が急増しました。
金融機関側も、つぎつぎと新商品を発売し、大々的に宣伝・勧誘活動を展開しています。
これから6つの個人年金保険の広告をみますが、すべて原則として、加入者は最初にまとまったおカネを一括で支払い、それを金融機関に長期間運用してもらい、運用が終わったら、年金として受け取るという仕組みになっています。
運用期間中に加入者が死亡した場合の生命保険機能もついています。
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